コーポレート・ガバナンス
<基本的な考え方>
当社は、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応えるため、法令・定款の遵守のみならず、企業倫理に基づく社会的責任の遂行と社会貢献責任を全うしつつ、効率的で透明性の高い経営によって企業価値の継続的な向上を果たすことが、当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方であり、経営上の最重要課題と位置付けております。azbilグループは、オートメーションに関わる製品・サービスの提供を通じて持続可能な社会へ「直列」に貢献し、成長を目指す「長期目標(2030年度)」及び「中期経営計画(2021~2024年度)」を策定し、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的向上を進めております。その基盤としてのコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、指名委員会等設置会社として、取締役会の監督・監査機能の強化、経営の透明性・健全性の強化、執行の責任体制明確化等に取り組んでおります。
アズビル株式会社のコーポレート・ガバナンスに関する報告書(全文)をこちらからご覧いただけます。
コーポレート・ガバナンスの基本方針
(1)株主の権利・平等性の確保
当社は、株主の権利が実質的に確保されるよう、法令に従い適切な対応をとるとともに、外国人株主や少数株主を含む全ての株主に配慮し、株主がその権利を平等に適切に行使することができる環境の整備を進めております。
(2)株主以外のステークホルダーとの適切な協働
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図っていくうえで、企業の社会的責任を強く自覚し、全てのステークホルダーに適切に配慮した経営を行うべきものと考えております。そのために当社では「人を中心としたオートメーション」をグループ理念として掲げ、人々の「安心、快適、達成感」のある仕事や生活を実現するとともに、地球環境への貢献を目指し、その達成に向け企業行動指針とそのガイドラインとしての行動基準を制定し、当社及び当社グループの全役員・社員に展開しております。グループ理念、行動指針、行動基準、経営戦略までを持続可能な社会に対して「直列」に繋げ、社会課題の解決と持続可能な成長の両立の実現を目指してまいります。また、「持続可能な社会へ『直列』に繋がる貢献」の実現に向けて、株主にとどまらず、従業員、取引先、顧客、債権者、地域社会をはじめとするあらゆるステークホルダーとの信頼関係を構築し、マルチステークホルダーとの適切な協働を通じた変革を加速させ、持続的に成長させることが重要との認識から、マルチステークホルダー方針を策定・公表するとともに、サプライチェーン全体の付加価値向上と取引先様との共存共栄の構築を目指す「パートナーシップ構築宣言」に賛同し、宣言を公表しております。
マルチステークホルダー方針及びパートナーシップ構築宣言につきましては当社のホームページに掲載しておりますのでご参照ください。
・マルチステークホルダー方針:https://www.azbil.com/jp/csr/csr-management/multi-stakeholder_policy.html
・パートナーシップ構築宣言:https://www.azbil.com/jp/csr/csr-management/partnership.html
内部通報制度については、従業員が不利益を被る懸念や利用に対する抵抗感を払拭するとともに、伝えられた情報が適正に活用されることが重要と考えております。こうした考えから、当社では「なんでも相談窓口」という名称の親しみやすい通報・相談制度を設け、受け付けた情報は個人情報に配慮したうえで社長・監査委員・社外取締役に報告される仕組みとしております。
(3)適切な情報開示と透明性の確保
当社は、意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレート・ガバナンスを実現する観点から情報発信に努めております。具体的には、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営計画・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、全てのステークホルダーに正しく理解してもらうため、法定の情報開示にとどまらず任意の情報開示を積極的に行うとともに、取締役・執行役候補の選任やCEO以下の経営陣幹部の選解任に関する方針と手続き、取締役・執行役の報酬の決定方針等の情報開示も行っております。引き続き開示内容の充実と透明性の確保に努めてまいります。
また当社は、外部会計監査人による適正な監査を担保するため、十分な監査時間の確保や会計監査人と社長・財務担当役員との定期的な面談等の実施、会計監査人と監査委員会・内部監査部門との四半期ごとの報告の実施等、適切な対応を引き続き行ってまいります。
(4)取締役会等の責務
当社の取締役会は、当社の持続的な成長と企業価値の向上を目指し、適切な企業統治の体制・構築とその運営に努めることを基本的使命とし、「取締役会規則」において基本的な経営戦略や経営計画等を重要な審議事項と位置付けて、自由闊達で建設的な議論を通じて適切な意思決定を行っております。また、経営の透明性・公正性を確保するため、適時開示、内部統制システム及びリスク管理体制等を整備するとともに、監査委員会は内部監査部門と連携しながら、経営に対して適切な監査と意見表明を引き続き行ってまいります。
当社は、取締役会がその役割・責務を適切に果たすためには、独立社外取締役の役割が重要であると認識しており、企業経営・監督等の幅広い経験や優れた専門性・知見を有した8名の独立社外取締役を選任しております。これらの独立社外取締役は、それぞれの多様なバックグラウンドを背景に企業価値向上についての助言や経営の監督など幅広い見地で職責を果たしております。なお、2024年6月25日現在、取締役総数は12名であり、取締役会における社外取締役の割合は過半数に達しており、国際性やジェンダー等の多様性に富んだ構成となっております。
また当社は、取締役会がその役割等を実効的に果たすためには、知識・経験等のバランスも考慮した多様性のある取締役の選任が重要であり、選任においても透明性と客観性を確保することが重要と考えております。当社は、中期経営計画の実現等、持続的な企業価値の向上の観点から、取締役に期待するスキル等を定めており、現在の取締役会における独立性・多様性・期待するスキルを確認しております。
当社の経営陣幹部における後継者のプランニング(後継者計画)につきましては、指名委員会にて後継者の育成・選定状況を審議し、審議の結果や議論の過程等を記録に残し、その審議内容等を定期的に取締役会に報告しております。後継者計画が適切・客観的に行われる運用を確保し、取締役会が後継者計画に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われる運用としております。
(5)株主との対話
当社は、企業の説明責任を果たすとともに、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するよう、株主・投資家との間で建設的な対話が進むための体制整備・取組みに努めております。なお、経営戦略・経営計画の公表にあたっては、収益計画等の基本的な方針を示すとともに、中期経営計画等における財務目標(売上高、営業利益、ROE等)・非財務目標及び目標達成に向けた戦略の骨子等を分かりやすく説明するよう努めております。
(6)コーポレート・ガバナンス体制の概要及び当該体制を採用する理由
azbilグループは、自らの中長期的な発展を確実なものとし、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応え、企業価値の持続的向上を進めるため、基盤となるコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、取締役会の監督・監査機能の強化、経営の透明性・健全性の強化、執行の責任体制明確化等に取り組んでおります。
当社は、指名委員会等設置会社として、過半数の独立社外取締役によって構成され、かつ独立社外取締役が委員長を務める指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置しております。加えて、取締役会から法的に明確な責任を負う執行役に大幅に業務執行権限を委譲することで、監督機能と執行機能の明確な分離を進め、機動的かつ効率的な意思決定に基づく執行体制を確保すると同時に、より客観的な経営の監督機能を強化しております。
また、取締役への情報提供や執行役との意見交換を行う場として取締役執行役連絡会を設け、加えて社外取締役間での意見交換会を定期的に実施するなど、指名委員会等設置会社としての取締役会によるモニタリングの実効性を確保するとともに、業務執行を担う執行役員制度を継続し、意思決定の質とスピードの向上実現を目指しております。
取締役会は原則月1回開催し、法令に定める事項のほか、経営の最高意思決定機関として経営の重要事項を議論・検討し、大きな方向性を示すとともに、ステークホルダーの意見を反映させるため適切な執行の監督を行っております。業務執行におきましては、代表執行役社長の決定を補佐する経営執行レベルの諮問機関として、執行役及び役付執行役員で構成される経営会議を設置しており、常勤監査委員がモニタリングの実効性確保のため出席しております。経営会議を原則月2回開催することで、迅速な意思決定と執行の徹底により事業推進力の強化を図っております。
2024年6月25日現在で、当社事業及び経営や監査に経験を積んだ取締役4名(曽禰 寛純、山本 清博、横田 隆幸、勝田 久哉)と、独立性があり、幅広い経験や優れた専門性・知見を有し、国際性やジェンダー等の多様性に富む独立社外取締役8名(藤宗 和香、永濱 光弘、アン カー ツェー ハン、佐藤 文俊、吉川 惠章、三浦 智康、市川 佐知子、吉田 寛)の合計12名の取締役を選任しており、取締役会における独立社外取締役の割合は過半数に達しております。これらの独立社外取締役は、取締役会にて意思決定を行う際、適切な監督・助言を通じ当社の企業価値の向上に寄与しているほか、取締役執行役連絡会等を通じて執行役等とも定期的に意見交換を行っております。
(7)取締役会及び各委員会の活動状況
<取締役会の活動状況>
2023年度は取締役会を合計12回開催し、12名の取締役はいずれの取締役会にも出席いたしました。取締役会で議論された主な事項は次のとおりです。
(指名委員会)
指名委員会は、2024年3月31日現在、伊藤 武(独立社外取締役)が委員長を、アン カー ツェー ハン(独立社外取締役)、吉川 惠章(独立社外取締役)及び山本 清博(取締役代表執行役社長)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2023年度は指名委員会を12回開催し、4名の指名委員はいずれの委員会にも出席いたしました。指名委員会における実施事項と具体的な検討事項は次のとおりです。
(監査委員会)
監査委員会は、2024年3月31日現在、佐藤 文俊(独立社外取締役)が委員長を、佐久間 稔(独立社外取締役)及び勝田 久哉(非業務執行社内取締役)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2名の独立社外取締役及び1名の当社事業に精通した非業務執行の社内取締役が、内部監査部門と一体となり監査計画を立て、多角的な監査活動を行い、また社内監査委員が常勤体制を敷き、監査委員会監査の実効性を高めております。監査委員長の佐藤 文俊は、他事業会社にて長年経理財務管掌役員として財務諸表等の作成の責任者等に従事した経験があり、財務及び会計に関する相当程度の知見を有するものであります。また、監査委員会の職務を補助する専任の組織として監査委員会事務局を設置し、3名が監査委員会の職務遂行を補助しております。監査委員会は原則月1回開催し、必要に応じて随時開催しております。2023年度は監査委員会を13回開催し、3名の監査委員はいずれの委員会にも出席いたしました。監査委員会監査における2023年度の主な重点監査項目と具体的な監査内容は次のとおりです。
また、①内部監査部門との連携、②会計監査人との連携、③監査委員による監査法人の評価についてはそれぞれ以下のとおりです。
①内部監査部門との連携
年度の内部監査計画策定に当たっては、監査委員会との間で連絡調整を密に図ったほか、監査委員会に内部監査担当執行役員である内部監査部門長も出席を要請し、監査委員会監査と内部監査の実施状況について情報共有と意見交換を行いました。また新たな試みとして、海外子会社監査について内部監査部門との合同監査を実施いたしました。
②会計監査人との連携
監査委員会が制定している会計監査人の評価基準に基づき、会計監査人からの定期的な監査等の報告聴取、経理部門や内部統制部門、内部監査部門からの会計監査人に対する評価、会計監査人が実施する監査の立ち会いなどを通じて会計監査人による監査の相当性、会計監査人の独立性、監査品質等について評価を行いました。
また、会計監査人及びそのネットワーク・ファームが当社あるいは当社子会社に実施する非保証業務について、会計監査人から提供される情報に加え、適宜社内関係部門へも確認をとりながら、独立性の観点から評価を行ったうえで事前了解を行いました。
さらに、監査上の主要な検討事項(KAM)の項目・内容等の検討状況等の説明聴取等を実施いたしました。
③監査委員会による監査法人の評価
監査委員会では、会計監査人の(1)専門的能力(2)監査品質管理体制や独立性(3)監査計画、コミュニケーション、監査活動の3項目からなる評価基準を制定し、会計監査人からの定期的な監査・レビュー報告聴取、会計監査人の品質管理体制に関する説明聴取、会計監査人監査の立会、経理部門や内部監査部門からの会計監査人に関する情報収集等を通じて会計監査の評価を行いました。
(報酬委員会)
報酬委員会は、2024年3月31日現在、永濱 光弘(独立社外取締役)が委員長を、藤宗 和香(独立社外取締役)、三浦 智康(独立社外取締役)及び横田 隆幸(取締役代表執行役副社長)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2023年度は報酬委員会を10回開催し、4名の報酬委員はいずれの委員会にも出席いたしました。報酬委員会における実施事項と具体的な検討事項は次のとおりです。
(8)取締役候補の選任及びCEO以下の経営陣幹部の選解任に関する方針と手続き
a.取締役
取締役候補者は、人格・識見に優れ、当社及び当社グループ全体の成長と企業価値向上に資する人材であることを基本要件としております。取締役候補者の指名・選任については、指名委員会でスキル・マトリックスや現行の委員会の構成も確認・検討し、国際性やジェンダー(ダイバーシティ)も考慮のうえ、決定しております。
b.CEO以下の経営陣幹部
CEO以下の経営陣幹部(社長/CEO、副社長、執行役)の選任にあたっては、選任基準及び取締役会の構成に関する考え方を基に、指名委員会での審議を経たうえで、取締役会にて決定しております。
(選任基準)
経営陣幹部は当社の企業理念を十分理解し、企業経営に関する深い知識と国内外での幅広い経験、コーポレートガバナンス・CSR・コンプライアンスに関する高い見識に加えて、グループ全体を牽引し、持続的な成長に導くことができる能力を有する人材であることを基本要件としております。
(解任提案基準)
CEO以下の経営陣幹部の解任の方針と手続きに関しましては、以下に挙げる基準を基に、解任提案となる対象につき公正かつ厳格な調査等のプロセスを経て、指名委員会による審議を行います。この結果、解任が妥当であるとの判断に至ったときは、取締役会にてこれを決定いたします。解任提案基準は、会社において重大な法令・定款違反により業務上の重大な支障が生じた場合や、本人において職務遂行・継続が困難となる事象が発生した場合、並びに法令に定める退任事由が生じた場合であります。なお、社長/CEOの解任については、業績悪化等の定量的な事象も考慮のうえ指名委員会にて適宜審議を行います。
コーポレート・ガバナンス体制 (2024年6月25日現在)
※取締役会の議長は、非執行の取締役であります。
取締役会全体のバランス、多様性(2024年6月25日現在)
当社では、変化の激しい事業環境の中、中長期的な企業価値の向上に資する知識・経験等のバランスがとれ、多様性のある取締役会の構成が必要と考えております。こうした基本的な考えに基づき、2024年6月25日現在で、12名の取締役の内訳は、当社事業及び経営や監査に経験を積んだ社内取締役4名と、独立性があり、幅広い経験や優れた専門性・知見を有する独立社外取締役8名となっており、そのうち、女性が3名(うち1名が外国籍)となっております。また当社は、中期経営計画の実現等、持続的な企業価値の向上の観点から、取締役に期待するスキル等を定めており、現在の取締役会における独立性・多様性・期待するスキルを確認しております。
取締役会の実効性の向上
当社は、監督機能と執行機能の明確な分離を図り、経営の監督機能の更なる強化を進めるため、2022年6月に「指名委員会等設置会社」へ移行いたしました。当社の取締役会は、客観的かつ建設的な議論を通じて経営戦略等の決定と執行の監督を行い、中長期的な企業価値の向上に努めております。その役割・責務を適切に果たすべく、取締役会の課題や改善点を洗い出し、取締役会の実効性を高めるための取組みに繋げるため、毎年実効性の評価を実施しており、加えて一定期間ごとに外部機関を利用しております。2023年度は、2022年度に引き続き指名委員会等設置会社への移行に伴い、ガバナンス強化と取締役会の実効性向上が着実に進んでいることを確認し、あわせて2022年度認識した課題への対処により、取締役会の実効性が確実に改善・向上しているかを評価いたしました。また、評価にあたっては、考え方・進め方について議長を中心に検討するとともに、経年での連続性を考慮し、2022年度に外部機関を利用して設定した質問票の項目を活かして調査を実施いたしました。
全ての取締役から2023年度における調査項目である(1)取締役会の役割・機能、(2)取締役会の規模・構成、(3)取締役会の運営状況、(4)指名委員会の構成、役割、運営状況、(5)報酬委員会の構成、役割、運営状況、(6)監査委員会の構成、役割、運営状況、(7)社外取締役に対する支援体制、(8)投資家・株主との関係、(9)ガバナンス体制・取締役会の実効性評価全般、(10)取締役自身の自己評価、に関する意見・評価結果を確認したうえで、実効性についての現状の評価及び課題の共有と今後のアクションについて取締役会において建設的な議論を行いました。
その結果、当社取締役会は適切な規模・構成のもと、指名委員会等設置会社としての監督機能の在り方を取締役会メンバーが明確に共有しながら役割を適切に果たしていること、取締役への情報提供や執行役との意見交換を行う機会として設けた取締役執行役連絡会により、取締役と執行役、社内取締役と社外取締役の間の適切なコミュニケーションが確保され、中長期での重要な経営課題に関する議論の場として機能していること、また指名、監査、報酬の各法定委員会はいずれも規模・構成、委員会での議論内容についても適切であり、取締役会全体の実効性については適切に確保されていることを確認いたしました。また、昨年の実効性評価において、取締役会は、より重要な経営課題の議論を進められるよう、監督と執行の役割分担の一層の明確化や付議資料の改善に取り組むほか、取締役会の適切な構成を維持・向上できるようスキル・マトリックス等の議論が取締役会及び指名委員会において重要との認識をメンバーで共有いたしました。これを踏まえて、2023年度は、取締役会付議基準の改定及び付議資料の改善を行うことで取締役会での議論の実効性をより高める体制を整えるとともに、中期経営計画に関する取締役会での議論に加えて、取締役執行役連絡会やオフサイトミーティングで実効性評価を通じて重要な経営課題として特定した議題について集中的に討議いたしました。加えて、取締役会において、取締役会の適切な構成を維持・向上できるようスキル・マトリックスの議論を実施いたしました。このような取組みは、本年の実効性評価において評価された項目の一つです。
今後、取締役会は、引き続き、重要な経営課題の議論を進められるよう付議資料の改善に取り組むほか、権限委譲した事項に関してはモニタリングを一層強化すること、取締役会の適切な構成を維持・向上できるよう取締役会及び指名委員会において議論を進めていくこと、中長期的な企業価値の向上に向けて社外取締役と株主の皆様との対話を促進すること、を取締役会で共有いたしました。当社は、これからも持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、取締役会の実効性を高める取組みを継続的に進めてまいります。
役員報酬
当社は、指名委員会等設置会社として、委員長を含む委員の過半数が社外取締役である報酬委員会が、取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針を決定しております。
【アズビル株式会社 報酬ポリシー】
当社は、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、オートメーションに関わる製品・サービスの提供を通じて持続可能な社会へ「直列」に貢献することを目指しております。
役員報酬制度については、「長期目標(2030 年度)」及び「中期経営計画(2021~2024 年度)」の実現を後押しするため、執行役の企業価値増大への貢献意識及び株主価値の最大化への貢献意欲を一層高めるとともに、業務執行を担わない取締役についても株主の皆様との価値共有を図る制度とすることで、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献に向けた取組みを推進します。
■当社のグループ理念
当社は、「人を中心としたオートメーション」で、人々の「安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境に貢献します。そのために
●私たちは、お客さまとともに、現場で価値を創ります。
●私たちは、「人を中心とした」の発想で、私たちらしさを追求します。
●私たちは、未来を考え、革新的に行動します。
を当社のグループ理念としています。
■役員報酬の基本方針
当社の役員報酬は、グループ理念の実現に向け、短期的な業績のみならず、中長期的な業績目標の達成及び企業価値向上を動機づける内容とすべく、以下を基本方針としております。
-当社の事業特性に鑑み、中長期目線での企業価値向上への意識を促し、株主の皆様との価値共有をより一層促すものであること
-当社の経営理念の実現及び中長期的な業績目標達成に向けて、優秀な経営人材の確保に資するものであること
-独立性・客観性の高い報酬制度として、当社のステークホルダーに対する説明責任を果たすことができる内容であること
■報酬水準
当社の役員(執行役及び取締役)の報酬水準は、外部調査機関のデータを活用し、報酬委員会において妥当性を検証のうえ、報酬委員会の決議により設定いたします。また、外部環境の変化に応じて、適宜見直しを行うものといたします。
■報酬構成
当社の執行役(取締役を兼務する執行役を含む、以下同じ)の報酬構成は、その役割と責任に基づき、毎月支給される固定報酬である「基本報酬」、短期インセンティブ報酬としての「賞与」、中長期インセンティブとしての「株式報酬」から構成されます。中長期的な業績目標の達成及び企業価値向上を動機づける報酬構成とするため、インセンティブ報酬の割合をより高め、代表執行役社長の報酬の構成割合は、「基本報酬:賞与(基準額):株式報酬(基準額)」=「4:3:3」を目途見込みとした設計としております。他の執行役の報酬構成割合は、この設計に準じて、期待される役割と責任を考慮し決定するものといたします。なお、取締役(執行役を兼務する取締役は含まない、以下同じ)の報酬は、「基本報酬」及び「株式報酬」で構成しております。
●執行役
(1)基本報酬
・役位等の範囲に基づき、月例の固定金銭報酬として支給いたします。
(2)賞与
・単年度の会社業績や非財務指標を勘案し、業績連動型の金銭報酬として支給いたします。
・財務指標は、中長期的な企業価値の向上を目指し、当社の主要な経営指標である売上高及び営業利益を重要業績評価指標(以下、「KPI」という。) として採用いたします。また、非財務指標の観点も踏まえ、これらの目標達成度に応じて支給額が変動いたします。
・非財務指標は、執行役がそれぞれ担う、中期経営計画の実現に向けて設定した様々な施策の実施や、CSR経営への取組み、後継者人材の育成等の役割の達成度合いを対象とし、その評価に基づく報酬額を報酬委員会が決定するものといたします。
・財務指標及び非財務指標を勘案し、最終的な支給額は0%~150%の範囲内で変動いたします。
・上位の役位ほど、財務指標のウェイトが高まる設計としております。なお、一例として、執行役社長におけるKPI及びその評価ウェイトは以下のとおりです。
(3)株式報酬
・株主の皆様との価値共有を図りながら企業価値を持続的に向上させることを目的とし、原則として執行役の退任後に支給いたします。
・役位ごとに株式報酬基準額が定められ、当該基準額のうち、50%は業績連動、残りの50%は非業績連動の株式報酬として構成いたします。
・業績連動部分にかかる指標は、株主との利害共有を目的とした相対TSR(株主総利回りをTOPIX(東証株価指数)と相対的に比較して評価する指数)及び当社の中期経営計画に掲げる指標である営業利益率をKPIとして採用いたします。また、非財務指標として、azbilグループSDGs目標として掲げた「お客様の現場におけるCO2削減効果」を指標として採用いたします。中期経営計画の期間に対応する目標の達成度に応じて、0%~150%の範囲内で変動いたします。各KPIの評価ウェイトは以下のとおりです。
・非業績連動部分は、株主の皆様との価値共有をより一層促すものとして、交付株式数が固定された株式報酬として支給いたします。
・株式報酬は、信託型株式報酬制度を通じて支給いたします。本制度は、制度対象者に対して、役位に応じたポイントを毎年付与し、制度対象者の退任後に、累積したポイント数に相当する当社株式を信託から交付するものです。
●取締役
(1)基本報酬
・職責に基づき、月例の固定金銭報酬として支給いたします。
(2)株式報酬
・株主の皆様との価値共有を図りながら企業価値を持続的に向上させることを目的とし、原則として取締役の退任後に支給いたします。
・一定の株式報酬基準額が定められ、全て非業績連動の株式報酬として構成いたします。
・株式報酬は、信託型株式報酬制度を通じて支給いたします。本制度は、制度対象者に対して、一定のポイントを毎年付与し、制度対象者の退任後に、累積したポイント数に相当する当社株式を信託から交付するものです。
■報酬決定プロセス
・取締役及び執行役の報酬等については報酬委員会で決定しております。当社の報酬委員会は、委員長を含む委員の過半数が社外取締役であり、客観性・透明性を確保しております。
・報酬委員会は、当社の取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容を決定する権限を有しており、主に①取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針、②取締役及び執行役の個人別の報酬等の内容、③執行役の業績連動型報酬の決定に係る全社業績目標及び各執行役の個人別目標の達成度に基づき評価の決定を行っております。
・当社を取り巻く外部環境に大幅な変化があった場合には、業績連動報酬に係る目標値や算定方法等の妥当性について、報酬委員会において慎重に審議を行ったうえで、例外的な措置をとることがあります。
■報酬の没収・返還(マルス・クローバック)
・過年度決算の修正が発生した場合には、役員に対して、株式報酬制度による当社株式等(業績連動部分)の全部または一部の交付を行わず、支給済みの業績連動報酬の全部または一部の返還を求めることができるものといたします。
・役員に重大な不正・違反行為等があったと認められた場合、当該役員に対して株式報酬制度による当社株式等の全部または一部の交付を行わないことができるものといたします。
■情報開示等の方針
・役員報酬制度の内容については、ディスクロージャー・ポリシー及び各種法令等に従い作成・開示することとなる有価証券報告書、株主総会参考書類、事業報告、コーポレート・ガバナンス報告書及びホームページ等を通じ、迅速かつ積極的に開示いたします。また、株主や投資家の皆様とのエンゲージメントについても、積極的に実施いたします。
2023年度役員の報酬等の総額
社外取締役の貢献
当社において、会社法に定める社外取締役は、東京証券取引所が定める独立役員の要件に加え、当社独自の社外役員の独立性判断基準を制定し、その基準を満たしています。その上で、当社の経営課題や中長期的な企業価値の向上に関わる建設的な提言や的確な指摘・助言を期待することができる候補者を社外取締役に選任しております。社外取締役は、それぞれの多様なバックグラウンドを背景に取締役会において積極的な質問及び提言を行い、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上へ貢献しております。
社外取締役の選任理由及び2023年度の取締役会への出席状況
藤宗 和香
長年にわたり検事として活躍し、最高検察庁検事退官後は法科大学院で教鞭をとるかたわら国の審議会委員を務めるなど、高い見識と豊富な経験を有しております。当社の取締役会においては業務執行の監督のみならず、コンプライアンス経営やリスク管理の更なる徹底と経営の透明性・公正性を高めるため、法律専門家としての幅広い知識・経験から、またサステナビリティやCSRの観点も踏まえた積極的な発言を行っており、業務執行に対する監督、助言等、適切な役割を果たしております。
取締役会 12回中12回出席
永濱 光弘
金融機関で要職を歴任し、企業経営、金融・証券分野及びグローバルビジネスに関する幅広い知識と豊富な経験を有しております。2015年に当社の社外監査役に就任後は、コーポレート・ガバナンスや会社経営の在り方等に関する優れた見識を活かして当社事業全般を監査し、また、2019年より当社の社外取締役として業務執行の監督のみならず、経営の透明性を高めるため、資本市場の視点やグローバルな観点も踏まえた積極的な発言を行っており、業務執行に対する監督、助言等、適切な役割を果たしております。
取締役会 12回中12回出席
アン カー ツェー ハン
国際法律事務所においてパートナー弁護士を務め、海外企業案件に加え、日本企業の国際間取引案件における契約の締結支援を行ってまいりました。また、多くの日系企業との業務経験を有しており、日本の商習慣にも詳しく、さらに当社が属する業界に関する知識も有しております。当社の取締役会においては国際ビジネスに関する高い知見を活かして、国際事業伸長に向けた事業推進体制や中長期的な成長に向けた投資への考え方などグローバルな観点も踏まえた積極的な発言を行っており、業務執行に対する監督、助言等、適切な役割を果たしております。
取締役会 12回中12回出席
佐藤 文俊
わが国の中央銀行において要職を歴任し、金融分野での幅広い知識と豊富な経験に加えて、製造業における事業会社での経理、法務、人事等を統括する管理部門における勤務経験及び取締役としてのマネジメント経験を有しております。2019年に当社の社外監査役に就任後は、当社事業全般を監査し、また2022年からは取締役(監査委員)として当社のコーポレート・ガバナンス及び内部統制の向上に貢献してまいりました。当社の取締役会においては当社の事業・財務戦略の妥当性及びリスク管理やコーポレート・ガバナンス強化の観点から積極的な発言を行っております。また、財務・会計・法務に関する知見のほか、企業経営に関する知見も有しており、業務執行に対する監督、助言等、適切な役割を果たしております。
取締役会 12回中12回出席
𠮷川 惠章
グローバルに事業を展開する総合商社において要職を歴任し、海外事業展開や事業ポートフォリオ戦略に関して幅広い知識と豊富な経験を有するほか、シンクタンク・コンサルティング企業における企業経営経験等を有しております。2022年に当社の社外取締役に就任し、豊富な海外事業経験・見識、営業・マーケティングに関する知見を踏まえ、当社の国際事業戦略、中長期的な成長に向けた事業戦略への考え方や人材育成について積極的な発言を行っており、業務執行に対する監督、助言等、適切な役割を果たしております。
取締役会 12回中12回出席
三浦 智康
シンクタンク・コンサルティング企業において要職を歴任し、IT・技術革新や新事業創出など幅広い分野の知識と経験、公益財団法人における経営人材育成の豊富な経験も有しております。2022年に当社の社外取締役に就任し、豊富なIT・技術領域における知見や新事業創出についての経験、人材育成経験から当社の中長期的な成長に向けた技術面も踏まえた事業戦略、人材育成面から積極的な発言を行っており、業務執行に対する監督、助言等、適切な役割を果たしております。
取締役会 12回中12回出席
市川 佐知子
日本及び米国ニューヨーク州の弁護士並びに米国公認会計士として、グローバルな視野を持ち、豊富な経験と広範な知識・専門性を兼ね備えています。さらに、他の製造業を中心とする上場企業で社外役員を務め、コーポレート・ガバナンスや会社経営の在り方について優れた見識も有しております。今般、当社の社外取締役として同氏の有する豊富な法務や会計に関する専門知識・経験、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス等の見識を活かし、取締役会における業務執行に対する監督のみならず、経営の透明性を高めるため幅広い見地から客観的な指摘、助言等、適切な役割を果たすことができると判断しております。
取締役会 ー回/ー回 ※2024年6月25日開催の定時株主総会において選任
吉田 寛
グローバルに事業を展開する上場化学メーカにおいて要職を歴任し、財務・会計に関する幅広い知識と、製造業における経営企画・戦略立案の豊富な経験、執行役及び監査役としての経験を有しております。今般、当社の社外取締役として同氏の有する豊富な財務・会計に関する専門知識に加え、製造業における経営企画・戦略立案の豊富な経験を活かし、取締役会における業務執行に対する監督のみならず、経営の透明性を高めるため幅広い見地から客観的な指摘、助言等、適切な役割を果たすことができると判断しております。
取締役会 ー回/ー回 ※2024年6月25日開催の定時株主総会において選任
社外取締役コメント
社外取締役
𠮷川 惠章
アズビルのコーポレート・ガバナンスの現状と未来
アズビルはコーポレート・ガバナンス(CG)においては、文字通りフロント・ランナーと言えます。
当社が2022年6月、従来の「監査役会設置会社」から「指名委員会等設置会社」に移行して丸2年経過しましたが、指名委員会等設置会社が上場企業の中でもまだ少数に留まる中、アズビルは着実にCG体制の整備を進めています。
監督機能と執行機能の分離が進んだ結果、取締役会では重要な経営課題に、より多くの時間をかけて議論する体制ができつつあります。一方業務執行については大幅に権限移譲が進んだ結果、監督側の意思決定には、執行側からの十分な情報提供が不可欠です。
当社での情報提供の機会を挙げれば、経営会議の情報共有、取締役執行役連絡会、取締役執行役でのオフサイトミーティング、azbilグループ幹部会議、生産拠点・子会社訪問、展示会視察、等々枚挙にいとまがありません。これらの機会を通じ、監督と執行双方の意見交換の場が生まれ、それが取締役会での議論に良い緊張感と充実感を与えています。
また2023年の年初から、ほぼ月次で社外取締役間の意見交換の場を持っています。輪番で決めた幹事を中心にテーマを出し合い、各参加者の専門性や気付きをベースに、取締役会の活性化に資する自由闊達な意見交換の場としています。私自身この場を通じ、他社外取締役の高い知見や見識から大いに刺激を受け、社外取締役が果たさなければならない責務をあらためて自覚する場ともなっています。
日本でも指名委員会等設置会社の数が増えつつありますが、監査役会設置会社が企業の大宗を占めるのが現状です。モニタリング・ボードからさらに一歩踏み込んだ監督機能を果たし、ボードと執行が成長戦略をともに議論できるようなCG体制を築くには監査役会設置会社では不十分であり、当社の2年前の新体制への移行は健全な経営に向けた大きな決断だったと評価しています。
CG改革が、形式から実質のステージに移行しつつある現在、当社は現状に満足することなく、フロント・ランナーであり続けたいと思います。グローバルに不透明さを増す経営環境の中、変化に果敢に対応できるリスクテイクや、ポートフォリオの不断の見直しなど、執行がスピード感を持った意思決定を実現するための、取締役会による客観的監督機能の強化に向け、さらに努力を続けます。